秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
物語の結末を説明し終える頃には頭痛がしたのか、大聖女は額を手で覆いため息をつく。
無理もない。自分は悪の限りを尽くすラスボスで、最後はヒロインの手によって滅ぼされるのだから。
……だが、自分の脳内混乱ポイントは、そこだ。
この大聖女という尊き御方は、アフ愛で綴られている程の悪女ではない。
当の本人は、贅沢絢爛ではなく堅実で質素な生活を送っている。聖女らに任せっきりではなく、自らも慈善活動に勤しんでいるのだ。本当にホワイトな御方だ。
物語と現実にかなりのギャップがあるのだ。
大聖女のキャラだけではない。この世界にはアフロディーテという女神も存在しない。
世界観やキャラはアフ愛の世界そのものだが、微妙に食い違う点がいくつかある。
この世界は、本当にアフ愛の世界なのか。
それに加えて、あの女性の『警告』。
この世界が、異世界の【邪悪なる気】に襲われている。
しかし、彼女プリムラが【時戻り】を使い過ぎたせいで、邪悪に対抗する【秘匿されし聖女】が神託を受けていない。
この物語の結末を知り、異世界からの転生者である自分が、邪悪を阻止して、王家をこの国を護ってほしい、と。