秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
と、ヒヤヒヤしながら監視していたのだが、潜入を続けていくうち違和感が生まれる。
ローズマリーを取り囲む五人の攻略対象は、あまりにもローズマリーに傾倒しているということ。
その様子はあまりにも盲目的、病的であること。だって、常時開催される濡れ場はエスカレートし、とうとう複数プレイが始まってしまう。
なのに、これは真実の愛だなんて、貞節を重んじる貴族にそんなのあり得るか。
これは、異常事態だ。
……そして、極め付けはローズマリーの何気なく一言。
「大丈夫よ?私にはアフロディーテの力があるんだから。この国を魔の手から救ってみせる!」
この世界には存在しないアフロディーテなんて女神の名を堂々と口にする。
……これは、クロだ。
ローズマリーも、この世界がアフ愛の世界だと知っている、転生者。
そして、女神・アフロディーテの力は……恐らく邪気。禁忌の【魅了】が何か。
異世界からの【邪悪なる気】は……この女だ。
そう確信したと同時に、プリムラ夫人の警告の意味も漸く理解出来てきた。
恐らく、王太子殿下や公子に手を出しているこの売女が傾国すると言いたいのか。