秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
大聖女はこれを『精霊王様の思し召し』と言った。
その発言を最初は『変な宗教だな。精霊王様信じ過ぎじゃね?』と、思っていたが……今ならわかる。
精霊王は、この事態を見捨ててはいなかったのだということを。
或いは、山あり谷ありで結局はイレギュラーは認めないのかもしれない。
立ち止まって、振り返る。
絶世の美悪女が、生涯幽閉されることとなった物々しい石造りの塔を、外から眺めて今一度思う。
自分が考えるに、彼女ーーローズマリー令嬢は自業自得だと思う。
だって、この世界はゲームの世界と似て異なる世界。その判別がつかなかった。
ゲームの世界は、二次元妄想の世界。……この世界は現実、三次元の世界。
同じ立場の自分でさえ、ちょっと調べりゃその事実に辿り着いた。だって、世界観や人物は実際と同じではあるが、綿密な箇所に相違がある。この世界に、アフロディーテという女神は存在しない。
なのに、彼女はこの世界を『ゲームの世界と同じ』だと信じて疑わなかった。それ故に、ゲーム内のヒロインであるかの如く振る舞ったのだ。
だが、ゲームの世界はあくまでも幻想。ファンタジーだ。