秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
それを現実世界で実際に遂行出来ると思うか?
王太子殿下、複数の貴族令息をいっぺんに侍らせることが許されると思うか?
……これは、異世界に転生したとはいえ、現実と幻想の区別をつけられなかった、ローズマリー……に、転生したどこぞの女の失態だ。
同情はしてやるが、温情は必要ない。
「……どうしましたか、ファビオ」
立ち止まったのを不思議に思ったのか、前を歩いていた尊い御方も立ち止まっている。
心配そうに向ける視線に、元気よく首を横に振って返す。
「ううん、何でもないよ。それより早く戻ろ。お茶しよ」
「そうですね。お茶でもしながら貴方の野球の話を聞くとしましょうか」
「おおっ。聞く?じゃあ、今日は何の話にしようかな」
「ええ、お茶は私が淹れましょう」
「わーい!」
塔の前に停めてあった馬車へ、尊い御方をエスコートしながら、笑い合って乗車する。
ーーさて。プリムラ夫人からのミッションを達成した今、これからどうしようか。
だなんて、空虚感に浸る暇なんてない。
今、自分はこの世界で生きている。
美味しいモノ食べて、美味い酒飲んで、大切な人が幸せそうに笑って暮らしているから、それでいいじゃないか。
強いて言えば、足りないものは……野球?
次は、野球をこの世界に普及させてみるよう頑張るか?