秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない

使用人らから、それぞれささやかなプレゼントが贈られ、更なる満面の笑みを見せていた。

俺たちからもささやかながらの贈り物はさせてもらった。

「ちょっ、公爵様!全然ささやかじゃありませんよ!」と、恐縮されてしまったが。

ちょっとした装飾品だよ。貰っておいてくれ。

……ん?ファビオ?おまえのプレゼント、何だ?赤い刺繍の入った白い皮のボール?珍しいデザインだな。なんだそれ。

「今度、これで変化球の投げ方を教えてやる!」と、ファビオに自信満々に言われたラヴィは首を傾げている。

こいつ、ホントわからねえ。



そろそろいい時間が過ぎた頃で、「旦那様、帰りますよ」と家内に声をかけられる。

使用人らも席を立っていて、帰り支度をしている。この流れは、もうお開きか。

……と、思いきや。

主役のラヴィとアルフォードは席を立つ様子がない。というか、アルフォードに笑顔のままテーブルの下で手を握られて引き止められ、席を立てずに辺りをキョロキョロしながら「え?え?」と、挙動不審になりかけていた。

そんな二人の様子を見ながら、馬車に次々と乗り込む使用人らは若干ニヤニヤとしている。

仕組んだな?仕組んでいたか。
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