秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない

「あとは二人でごゆっくり」と頭を下げられ、ラヴィは「ええっ!」と驚いていた。

後は若い二人の時間か?……それはそれは、どうぞごゆっくり。



アルカイックスマイルで我々を送り出す愚息と、挙動不審のラヴィを四阿に置いて、使用人を乗せた大型簡易馬車と我々の乗った馬車は発進する。

馬車の窓から見えるのは、白い雲が乗っかる青い空と、満開のピークが過ぎた、色薄いラベンダー畑。

……風景が、あの時の場面と重なって見える。

それは、感慨深く。



《ラベンダー畑、凄いわね!綺麗な紫色!》

《うーん、私。お腹の子の名前、この花と同じにしようと思うの!もう、素敵すぎて!》

《プリムラ……『ラベンダー』なんて変わった名前、イジメられないかい?》

《何言ってるのよ、セドリック!私たちの娘がそんな弱い子じゃないわよ!》



……ホント。おまえらの娘は、強く逞しく育ったよ、プリムラ。セドリック。

なんたって、傾国の危機を救ったんだぜ?プリムラ、おまえと同じように、な。



若き頃の思い出も蘇る。目の前にいるサルビアと四人で駆けた、あの若かりし頃の日々が。
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