秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない

表向きは流行り病で病死とされていたが……ラヴィの両親は聖騎士団による辺境への討伐遠征の際、高位魔獣の邪気に当たり、体が邪気に汚染されて無念の死を遂げた。

既に成人を迎えていたランティスはともかく、まだ幼いラヴィを残して先に逝くのは本当に無念だったろうに。

そんな事を思いながら、思い出のある窓の外のラベンダー畑をぼんやりと見つめる。

向かいに座るサルビアからは「感慨深いですね」と、一言掛けられた。

長年連れ添った妻には、俺が何を考えていたのかわかるのか。



すると、その時。

後方から着いてくる、使用人らの馬車から一斉に歓声が湧き上がった。

何だなんだ?と不思議に思い、窓を開けて後方を確認する。

後ろの奴らは、白い四阿に一斉注目して歓声をあげ、歓喜に溢れている。きゃあきゃあと声を上げて抱き合って喜ぶヤツらもいた。

「おっ」

「あらあら」

俺たちも思わず声が出た。



距離が離れ、小さくなった四阿では……愚息のアルフォードが、ラヴィの手を取り、跪く姿が。

見つめ合う二人。ラヴィのぎこちなく頷く姿が見えた。




おっ。おおっ。これはひょっとして……!
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