秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
……だが。窓の外に広がる景色は圧巻だった。
「わあぁ……!」
思わず声をあげてしまう。
そこには、見渡す限りの花があった。
平地はもちろん、丘陵地にも花が咲いている。花畑一面、右も左も前も後ろも彩りどりの花が咲き誇る。
……この広大な花畑は、公爵様の敷地内。一応、ルビネスタ公爵邸の庭園、なのだろうけどあまりにも広すぎて庭園と呼ぶには大きすぎるのだ。もう、観光名所、自然公園ぐらいの規模だ。さすが、『花の都』の主の私有だけある。
このルビネスタ公爵邸の花畑の中に……かつて、私の名の由来となったラベンダー畑もあるのだ。
恐らく……公爵様はそのラベンダー畑に私を連れて行きたかったのだと思う。元気のない私にラベンダー畑を見せて、母の思い出話でも聞かせて元気づけようとでもしたのだろう。
何とも、公爵様らしい。
「驚いた?庭園と呼ぶにはあまりにも広すぎてね」
窓に食い付き、風景に釘付けになっていた私に、アルフォード公子様は柔らかい笑みを向ける。
公子様の視線にハッと気付くが、目が合ってしまったら最後。その笑みにも、見惚れてしまいそうになる。
案の定、挙動不審になりかけた私は「は、はいぃっ」と、拙く返事をしてしまった。