秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
しばらくすると、馬車がゆっくりと停止した。
窓からずっと景色を見ていたので、目的地に到着したのだとわかってはいたが。
ラベンダーのあの鮮やかな紫色が見える。香りもする。
「さあ、降りましょうか」
公子様が先に降りて、またしても手を差し出してくれる……。ううぅぅ、何回緊張したらいいんだろう。
また、ガチゴチのまま馬車を降りるのだった。
……けど、そこにはそんな体の強張りなど吹っ飛ぶぐらいの景色が待っていて。
「わあぁぁ……」
ここも圧巻の景色で、またもや感動で感嘆し、思わず声を上げてしまう。
目の前に広がるのは、見渡す限りどこまでも続くラベンダーの花。まるで、地平線まで続く薄紫色の絨毯のよう。
その美しさに見惚れてしまうほど、とても綺麗だ。
加えて、スッと鼻を掠めるラベンダーの爽やかな香り。香りを運ぶ、肌に触れた涼しい風。
前に訪れた五年前と、変わらない。
亡き母がこのラベンダー畑を見て私の名前を決めた、と聞いた時の感動も甦ってくる。