秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
……だけど、このラベンダー畑を見て母のことを思い出し、前を向こうと思えたのは確かで。
「でも、このラベンダー畑を見て吹っ切れました。時間は戻らない、儚いものです」
淡い紫色の絨毯をいっぱい視界に入れながら、私は前を向く。
「起こってしまったことを悔やむのか、これからを見据えて励むのか。どちらがいいか。……ならば、前を向いて今の自分に出来ることをした方が良いのでは?って」
起こることに意味がないものなんてない、精霊王様の思し召しというのなら。
私が罪を着せられて、ここにいる意味は何なのか。それを考えなくてはならない。
冤罪は悔しいことだ。でも、公平なる精霊王様が見ているというのなら、いつか私の無実が証明されるはず。
ただ、それを信じて……前を向いて待つしかないのだ。
「時間は戻らない、儚いもの、か……」
公子様がポツリと呟いた。
私と同じく、その視線はラベンダー畑にある。
「……ラヴェンダー嬢は、王都の神殿で見習いを?父から聞いた話ですが」
「は、はい。15歳なので、神託はまだなのです」
「そうでしたか……」