秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
『何故、このルビネスタに来たのか?』という、詳細は訊いてこない。
アルフォード公子様も神殿の内部については、いくらかご存知のはず。今まで神殿に身を置いていた見習いが突然神殿を離れるということは、何らかの理由で追い出されたということを察しているはず。野暮な質問はしないだろう。
そこは予想通りで、公子様はそこを掘り下げることはしなかった。
「……実は、私も数ヶ月前までは王都の学園に通っていたんです。もう卒業を迎えましたが」
「そ、そうですか」
「王都は広いようで狭い。きっとどこかでお会いしてるかもしれませんね」
「は、はい……」
……実は、お会いしてます。公子様は気付いていないようですが。
だなんて、目の前で柔らかく笑う公子様にはとても言えなかった。
やはり気付かれてなかった。だいぶショックで苦笑いをするしかない。
だけど……今ここにいる公子様と、王都で見かけたあの時の公子様は本当に同一人物なのか、信じ難い。
《俺の女神を傷つける醜女よ。この正義の刃で切り刻んでくれる……!》
……あの時と、今。顔つきが全然違う。
何故なのか。