秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
一日の終わりの、気の解れる団欒の時間。……と、なるはずだったのに。
食事を始めてから間もなく、周りのみんなの様子がおかしいことに気付く。
失神してカトラリーを手から離し、その場に倒れる子。胸を押さえてもがき苦しむ子。のたうち回る子。
その食堂にいた六人中、五人に異変が起きた。
……私以外の全員が。
そして、その様子を見てすぐにわかった。
これは、毒だ。
食事に毒が入っていたに違いない。
中立の聖域である神殿内で、何故こんなことが……!
それに、何故?
何故、私だけ何の症状もなく、無傷なのか。
この騒ぎに駆け付けた見習いの先輩や神官たちも驚いただろう。
私以外のみんなに異変が起きていて、私だけが何の異変もなく、ケロッとしていたのだから。
……その場にいた、私以外の子が全員、毒に侵された。
この状況はどういうことか。
その場に駆け付けた神官らに、私は聞き取り調査を受け、すぐさま自室に軟禁された。
部屋から一歩も出るな、と。
ドアの向こうに、監視兵がつくほど物々しい雰囲気になっていた。
この扱い、私にでもわかる。
私に、毒物混入の容疑がかけられているのだ。