秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
過去の美しい回想の世界に、一瞬でも引き込まれていたことに、ハッと気づく。
考えていることを悟られまいと、繕うかのように次の言葉を慌てて口にした。
「そ、そうですっ!その通りだと、思います!悔やみ続ける毎日より、自分の出来ることを考えて励む毎日の方が良いに決まってます!試練は、精霊王様の思し召しです!」
「あはは。昔、神殿で指導を受けてた時、神官がそんなことを言ってたような。君は見習いだから神殿で教えを叩き込まれている真っ最中だよね」
「はい!」
でも、もう追い出されてしまいましたけど。
この世に起こる全てのことに、意味がないものなんて無い。
全て、意味があるのだ。
……だとしたら。
私が冤罪で神殿を追放されたことも、彼の後悔をするほどの凶行も。
このレディニアで、かつて憧れを抱いたこの御方と再会したことも。再び、このラベンダー畑を共に眺めていることも……何か意味はあるのだろうか。
「そういや、神殿にいたのなら……私の兄をご存知ですか?ランクルーザーという聖騎士なのですが」
「ランクルーザー様!いつも良くして頂いてます!優しいし、いつも美味しいおやつ持ってきてくれるんです!」
「おやつ……」
全ては、精霊王様の思し召し。