秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
「取り敢えず、楽しみにしてて?」
この話は、アルフォード様のこの一言で強引に締め括られる。
私も「はい……」と、答えるしかなかった。
夜会で忙しいのに、こんな得体の知れない居候のために悪いな……と、思う反面。
アルフォード様が、私のためにパーティーを考えてくれていることが嬉しいし、照れ臭くもあった。
罪人として追放されてきたのに、憧れの殿方に誕生日を祝ってもらえるだなんて、こんな幸せなことあるだろうか。
まさに、地獄と天国ぐらいの差だ。
そんな複雑な思いを抱えながらも、目の前の僥倖には素直に喜んだ。
ささやかな誕生日パーティー。取り敢えず、楽しみにしておいて?
……言葉の通り、それからの私にとってはささやかな楽しみとなる。
アルフォード様のあの時の一言が、頭の中で再生されてはウキウキさせられ、どのようなパーティーになるのかを勝手に想像する。
そんな私のお花畑な脳内とは違って、公爵邸は近付く夜会の準備で騒がしく、慌ただしくなる。
私がお手伝いをしていても、誰も注意はしないし気に留めないぐらい。
……しかし、少々浮かれ気分の現在の私には、この夜会で何が起こるとも知らず。
そうして、あっという間に日々は過ぎ、公爵邸の夜会の日を迎えたのだった。