秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
第五章 貴殿の顔が変わった
○○○





率直に言えば、私はこの夜会には出れない。

まだ16歳に満たずデビュタントを終えていないから、という理由もあるけど。この公爵邸に滞在する理由が理由だからだ。

一応貴族令嬢でもただの居候ですし。冤罪といえ、まさか罪人が華麗にドレスアップして夜会に参加など許されることではない。それに、神殿の関係者及び貴族の方と鉢合わせたら大変だ。

公爵様も「参加させてやりたいんだけどな」と言ってくれるし、私も夜会に憧れる気持ちはあるが、そこは我慢。



……なので、成人前の私。夜会は欠席。

の、はずですが。



(……)



夕焼けの赤が空を染め、そろそろ日が沈むという時間。ご招待客も次々と公爵邸にちらりほらりと集まり始め、夜会かそろそろ始まるという頃。

私は、夜会の会場である公爵邸のエントランスホールに来ていた。

……こっそりと。



身の上がバレないように、私がここにいると気付かれないように、ちょっとした変装……メイド服を着て。

夜会の時間、私は私室で過ごすように言われていたのだが、またしても約束を破り、堂々と夜会の会場にいたのだった。

< 94 / 399 >

この作品をシェア

pagetop