秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない


……と、言うわけで。

庭師さんの夜会に参加するため、自分のご馳走、もとい本日のスペシャルな夕食を調達しに夜会会場へ足を運んだのでありました。




公爵家のメイドの制服をちょっとお借りして、ファビオ曰くツインテールというトレードマークの二つ縛りヘアも、すっきりひとつに纏めて、恐らく私だとわからないでしょう。

食事を運ぶためのワゴンも調達しました。これで、給仕をしているただのメイドだと、誰もが疑わないでしょう。完璧です。

自分のアイデアに自画自賛をし、ちょっと調子に乗った私は、煌びやかに着飾った招待客に紛れて、何食わぬ顔でお皿を片手に食事を乗せていく。

牛ヒレステーキ、生ハムアボカドサラダ、美味しそう。



……だが、今の私はメイド。

声をかけられることもあって。



「ちょっと。そこのシャンパン頂けるかな」

「はい、ただいま」




派手目の夜会服を身に纏ったどこかの令息が、私に給仕を頼んできた。

今の私はメイド。言われた通りに、そこにあるシャンパンの入ったグラスを手渡す。

難なくお勤めをこなした。と、思っていたが。その令息は私の側を離れず、ニヤニヤといやらしい気持ち悪い笑みを浮かべていた。

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