秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない

「ねえ、君。ここのメイド?可愛いね」

「は、はぁ」

「君の髪、プラチナブロンドかと思いきや、よく見ると薄紫色が混ざってるんだね。素敵だよ。……よければこの後、向こうでどうだろうか」

「……」

これは、紛れもなく。噂に聞く、休憩室へのお誘いですか。

マーガレット姐さまから聞いたことがある。夜も更け、お酒が入れば気が大きくなり、気に入った女性を別室に連れ込んでウフフアハハみたいなことをするという……。

煌びやかで美しい貴族令嬢がそこらにたくさんいるのに、何故しがないメイドに声をかけるのか。そんなに夜も更けていないのに。

とはいえ、私はこれから庭師さんの夜会でカードゲーム大会に参加したいのだ。公爵様らの言いつけ通り、本場の夜会に参加してはならない。

なので。「すみません、お仕事がありますから」と、その場を離れようとしたが。

「待てよ!メイドごときが、俺の誘いを断るのか!」

「わっ!」

声を荒げては、腕をグッと掴まれる。捕まった!お酒の嫌な匂いが鼻を掠める。この御方は相当飲んでいらっしゃるようだ。

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