秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない

今の大声で、辺りは一斉にこっちに注目する。あわわ。こんな騒ぎになったら、公爵様らにここにいることがバレてしまう。

もう、何故私なんかに声をかけるんですか!

気持ち焦っていたのだが……そこで、天の助けが現れるのだった。



「ドガル子爵令息、うちのメイドが何か粗相をしましたでしょうか?」

「る、ルビネスタ公子……!」



天の助け、というか。今、ここで一番出会してはいけない人だった。

公爵家のイメージカラーである紅の夜会服がとてもお似合いな、アルフォード様だ。



ホスト側の高貴な身分であるこの御方の登場に、酔っ払い令息は慌てて背筋を伸ばしている。酔いも覚めただろうに。

そして、「なんでもありません、失礼しました!」と、頭をペコペコ下げながら向こうの方へと逃げていってしまった。まさか、下心持ってメイドに声をかけていたとは、ホスト側の公子様には言えないだろう。

やはり、高貴な身分の御方には逆らえないようだ。



そそくさと逃げる令息の背中を見つめてポカンとしていると、側では「はあぁぁ……」と、深いため息が聞こえる。



「……まったく。ラヴィ、何で君がここにいるんだい?」

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