さよならのキスと最後の涙
前に来た時は、予告を見ていて「あの映画、おもしろそうだね!」と話していた。しかし、今は互いに顔を見合わせることもなく、ただ映像が映し出される画面を見つめている。

映画は恋愛映画だ。俺はあまり恋愛ものは好きではない。前のデートで観たのもミステリー映画だったし、先輩は俺が恋愛ものは観ないことを知っているはずだ。

映画のストーリーは、主人公の男子高校生が同じ学年の女子生徒に恋をして、必死にアプローチをし、告白して付き合う。しかし、男子が転校することが決まり、女子とこれからのことを話していく物語だった……。あれ?この二人って……。

「ねえ、これって今の私たちみたいじゃない?」

先輩が小さな声で呟く。

俺が答える間も無く、映画はどんどん進んでいく。俺は何も言えないまま、ただ画面を見続けた。

『ねえ、私たちならきっと大丈夫だよ!どんなに会えなくても、どんなに離れてても、きっとこの気持ちを忘れたりしない。だから…今は笑ってさよならしよう。いつか、きっとまた会えるから』
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