さよならのキスと最後の涙
雨上がりの空が広がる空港。男子を見送りに来た女子が言った。

男子もすぐに笑い、頷く。

『そうだな。二人の絆を信じるよ。いつか、必ずここに戻る。その時は……こうやって抱き合おう』

男子が女子を優しく抱きしめる。女子が幸せそうに笑い、男子も微笑みながら涙を流す。

そして、優しいキスをして男子は大空へと旅立っていった。

画面が暗くなり、エンディングが流れる。人気の歌手の歌だ。

「終わったね。…とても素敵だったわ」

隣にいる先輩の顔を見ることができない。

「……そうですね」

先輩は、こんなシーンを望んでいるのだろうか。悲しまず、微笑んで離れることを望んでいるのだろうか。

「……行こう」

先輩が俺の手に自分の手を重ねる。その体温が愛しくて、抱きしめてキスをしたくなる。でも、抱きしめてしまうと自分が止まらないとわかっている。だから、それを懸命に堪えた。



次の日、部活が終わった後、俺と先輩は本屋に寄り道をした。先輩が買いたい本があるので付き合ってほしいと言ってきたのだ。
< 17 / 26 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop