さよならのキスと最後の涙
先輩は本屋に入ると、迷わずに店内を歩き、三冊の本を手に取った。

『愛しい人よ、巡り会えるその日まで』

『この歌は遠く離れたあなたのもとへ』

『春〜さよならと奇跡〜』

先輩が手に取った本は、どれも別れに関するものだ。

「この小説家の作品、とても好きなの」

先輩は微笑む。その表情を見た刹那に、俺は先輩の気持ちを聞きたいと思った。

「先輩、俺も寄りたいところがあるんです。…付き合ってくれませんか?」

レジでお金を払った先輩に、俺は言った。先輩は「もちろん」と頷いた。

本屋の近くには公園がある。もう六時なので、公園には誰もいない。

ベンチに腰掛け、誰もいない公園を見渡した。きっと三時や四時にはたくさんの子供たちが遊んでいるのだろう。

どれほど静寂にお互い包まれていたのだろう。

俺は久しぶりに先輩を真っ直ぐ見つめた。先輩のきれいな目の中に、どこか怯えた様子の俺の姿が映っている。

「先輩は、どうしたいんですか?これからのこと……」

先輩は少し迷った様子を見せ、少し考え込んだ。
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