さよならのキスと最後の涙
「俺は、先輩に片想いをしていた頃、自分の想いが届かなくても先輩が幸せに笑ってくれるのなら、それでいいと思ってました」

先輩の目を見て話す。もう、迷う自分はいない。

「先輩には、ピアノの練習に励んでほしいんです。頑張ってほしいんです。だから……別れませんか、俺たち」

そう言った刹那、先輩が「嫌!!」と言って抱きついてきた。

「両想いなのに別れるなんて嫌!!離れても繋がっていられるよ!だから……」

先輩は俺に抱きついたまま、声を上げて泣き出した。俺はその背中を優しくさする。

「俺は、先輩のことを愛しています。でも、「好き」という気持ちだけでは一緒にはいられません。夢を追いかけるためには、必要な別れもあります。先輩は、先輩の道を歩んで行ってほしいんです」

先輩は何も言わず泣き続ける。俺の目からも、涙がこぼれていった。

「会えなくて、もどかしくなって、先輩が知らない土地で苦しい思いをする方が耐えられないんです。誰にだってできることじゃない。だからこそ、頑張って夢に一歩でも近づいてほしい」
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