さよならのキスと最後の涙
「顔、真っ赤だし図星なんでしょ?」

意地悪な目で女子が俺を見つめる。

「あんた、先輩のこと目で追ってたりするし、バレバレなのよ!でも残念!!先輩には他に好きな人がいるのよ。知ってた?」

ショックで俺は固まった。先輩に好きな人……?

女子は俺を見下すように言い放った。

「あんたに個別で練習してるのは、先輩の好意とかじゃないのよ!部の足を引っ張らないようにするため。だから、先輩を目で追ったりするストーカーみたいなことは今すぐやめて!見ていてキモい!自惚れないで!!」

女子は言いたいことを言うと、音楽室へと走っていった。俺は歩くことを止め、廊下に立ち止まる。

先輩に、好きな人……。

頭の中はそれでいっぱいで、どうしたらいいのかもわからない。

俺はスマホをかばんから取り出し、吹奏楽部のグループラインを開き、「今日、用事があるので休みます」と送り、そのまま帰宅した。

そうだ。先輩は優しくてきれいで、しっかりしていて、男女問わず人気者だ。俺なんかよりも、素敵な人を好きになるに決まってる。

そう思うと、自分が情けなくてたまらなかった。

その日の夜に見た夢は、先輩が背が高くて俳優のようにかっこよくてお金持ちな人と結婚する夢だった。
< 7 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop