さよならのキスと最後の涙
先輩の好きな人は、先輩と同じ学年の野球部の男子生徒らしい。なんでも、先輩がピンチの時に何度も助けてくれるらしい。
その人は女子からの人気もあり、敵わないと一目見てわかった。そして、この人ならきっと先輩を幸せにしてくれると思った。
先輩はよくその人と帰っていた。部活が終わるのが遅いのは、吹奏楽部も野球部も同じだから。
その人といる時の先輩は幸せそうで、俺はその表情を見ているだけでよかった。……好きな人には、どんな形であれ、幸せになってほしいと思い始めていた。
……想いを隠して、誤魔化して、自分の中で無かったことにしようと思っていたから。
先輩がその人に想いを伝えたのは、土砂降りの雨の中、傘を差して並んで二人が帰っている時だった。俺は後ろをこっそりと歩きながら、二人を見ていた。
「あのね…ずっと前から…あなたのことが好きです。付き合ってください」
顔を真っ赤にしながら、先輩は告白した。
俺の恋は終わったと、行き場のない気持ちを噛み締めていた。それでも、これで先輩が幸せになるのなら……と結末を見守った。