私とあいつ 俺とお前
「遠慮しないで、上がってってよ。」
「あ、はい。」

今度こそは、ローファーを脱ぎ、家に上がらせてもらう。

「ここで傷洗って。」

あいつに洗面所に通してもらって傷を洗う。

「.....」

し、視線を感じる?
そっと横を見ると、あいつと視線が合う。

急いで視線を戻す。
え?なんで見てんの。どっか行ってよ。

「洗ったか?」

急に話しかけられ、肩がビクッと反応する。

「え、あうん。」

準備してもらってたタオルで洗った部分を拭きながら答える。

「じゃ、足こっちに向けろ。」

そう言われ、素直に足をあいつに向ける。
すると、救急箱から中ぐらいの大きさの絆創膏をとって、はりだした。

「え?ちょっと、そんなの自分でするよ。」

そう言って、止めさせようとしたが、無視された。さらに、もうひとつ絆創膏を取り出してもう片方の膝にも絆創膏をはりだす。

「はい、終わり。」

作業を終えたあいつは、救急箱を持って洗面台から出ていく。

あ、お礼言うの忘れてた。

そう考えていると、ひょこっとお母さんが洗面所に顔を出して、

「ケーキでも食べる?」

いきないり話しかけられて、対応に一瞬困ったが、姿勢を整えて、

「あ、いや、もう帰ります。」

そういうと、お母さんは見るからにテンションが下がった。



苦手なんだけどなこういう状況。
こう、なんていうか、そんな顔されたら断れないじゃん。

「そ、そうよね。いきなり来た家にずっといるのも嫌よね。」
「あ、いや、違います。
えーと、い、いただきますケーキ!」
「あら、そう?」

すると、さっきの低いテンションから一気にハイテンションへと変わったお母さんは、洗面所から出ていった。
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