イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活

また離されそうになって、つい出てしまった声は大きかった。
なんで、こんなに恥ずかしいのだろうか、別に手を触れられるくらいなんともない、と言いたいだけなのに。
しかしどんなに恥ずかしかろうと、ちゃんと言わなければきっと伝わらない、この人には。


きっと頑なに、私が男の人に触られたくないのだと信じている。
いや、男の人はやっぱり今でも苦手だけれども。


「歩実?」
「……ど、どういうわけか、郁人に触られるのは……そんな、嫌でも、ない」


郁人の腕を掴んだままの自分の手を見ながら、どうにか言った。


「……郁人?」


数秒返事がなくて、恐る恐る顔を上げる。
郁人は、目を見開いたまま、じっと私を観察していた。

いや、固まってる?
これ。


「あ、郁人はやっぱ嫌だよね、女の人苦手って言ってたし」


嫌がられてたとしたら、尚更恥ずかしい。
私、勘違い女みたい。

慌ててぱっと手をはなした。けど今度はその手を、ふたたび郁人が握りしめる。
そのまま、また、私の様子を窺う目をした。


――もしかしてこれって、私の反応を見てる?

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