イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
「え……」
本の世界から現実へ頭の中がシフトチェンジするのに時間がかかって。
気づいたら、唇が触れあっていた。
「……集中しすぎ」
「……あ、ごめん」
「寝不足になるぞ」
そう言って、ふたたび唇を重ねる。
郁人の癖なのか、やり方なのか、いつも最初は触れるだけで私の注意を向けさせて、それから二度、三度と重ねる。二度目、三度目が少しずつ、しっとりと長くなって来ているのは、多分気のせいじゃない。
啄みながら、唇の合わせを舐められた時、無意識に私も舌を出してしまった。
「んっ……」
舌先の感覚は驚くほど敏感で、思わず漏れてしまった声は自分のものとは思えないほど甘い。