イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活

「でも、佐々木さんとかなんか意外でした」
「何?」
「なんか、ふたりでお昼とか食べてるとこ見ると、なんか学生みたいっていうか……もっとこう、クールな大人のイメージだったんですけど」


そう言うと彼女は視線を宙に向け、さ迷わせた。多分、私と郁人が一緒にお昼を食べてる時の様子を思い出しているのだろう。


……多分、私のせいかなー。


私が男の人に慣れてないから、郁人の方が合わせてくれてるからだ。
手を握ることすら、あんなに慎重にしてくれたのだから、それ意外にもずっとそうして合わせてくれていたのかな、と最近思う。
だって、キスは私と違って最初からかなり余裕があったような気がした。


最初は、手を握って、触れるだけのキスをして。
私の様子を窺うように、指で私の手の甲を撫でる彼の仕草は、息苦しくなるほど私の心臓を追い詰める。

……それから。

その先のことを思い出しそうになり、キーボードを叩く手を止めた。
コーヒーのカップを取って、口に運ぶ。


「なんかスーツが学生の制服に見える時あるんですよねー、清すぎて。ちゃんとやることやってます?」
「……っ、げほっ」
「ちょ、大丈夫です?」

ひとくち含もうとしたところで急に変なことを言われて、咳き込んでしまった。
キスを思い出してだけで動揺してしまうのに変なこと聞かないで欲しい。

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