イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活

*****

経理にいた頃でも、私はそれほどしつこく追及をしていたつもりはない。
必要な事を求め、提出を促していただけで。結局、融通が効かないという部分がすべてだと思う。他人から見て私は鉄仮面と揶揄されるような印象だったらしい。

そのことに別に腹は立たないし、元より周囲から浮いてる身としては今更だ。
けれど、河内さんに言われて少し、その頃の自分を思い出した。

仕事であれば、必要事項の追求など躊躇わずに出来るのに。
それ以外のことになると、私はてんでダメだ。けれど、今はそんなことを言ってられない。ダメだろうとなんだろうと、郁人の事情に踏み込まなければならない。

これは結婚という契約を維持するために必要な、言わば『業務』だ。そう考えてしまえば、ちょっとは上手くやれそうな気になって来た。
< 168 / 269 >

この作品をシェア

pagetop