イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活

こんな風に、大切にされるなんて。

再び重なった唇は、今度はもう少し荒く口内を貪った。舌先を絡めて唾液をかき混ぜ、響く水音が淫らに感じて、キスなのにいけないことをしているような気持ちになる。

飲みきれなかった唾液が、唇の端から零れて顎から喉へ肌を伝い落ちる。はしたない、と身を強張らせてしまうと、気づいた彼のキスが逸れて唾液を追った。

「え……、んんっ」

首筋に唇を受けて、反射的に仰け反らせ喉元を晒す。零れた唾液を拭ってくれているだけだ、と思うには、私には刺激が強すぎた。

「い、郁人……あっ」

多分、そこに道筋はなかったはず。
彼の舌は、咽喉から耳の方へと逸れていく。耳朶を口に含まれ、舌に擽られたところが私の限界だった。

「ひんっ……!」

びくりと身体を震わせて、縋るように彼の服の袖を強く握りしめる。ふるふるふる、と左右に首を振れば、耳朶が解放されてくすりと吐息のような笑いが聞こえた。
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