イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
夫婦の日々～郁人side～
＊＊＊

歩実から契約内容の再考を要求された。
なんとなく、そう言われるような気がしていたから、彼女から切り出されたその瞬間は少々落胆はしたが納得していた。

彼女と暮らし始めて穏やかに日が過ぎていくうち、不意に触れたくなるような衝動を知った。
慎重に彼女の表情を窺って、嫌がる素振りはなかったように思う。だから、調子に乗ってしまっていたのか。

彼女が、契約書をじっと読み返しているのを見てしまった。
やはり、嫌だったのかもしれない、とその時に感じた。だから、その部分をもっと詳細にはっきりと、仕切り直したいという意味かと思った。

仕方がないと思う。トラウマがあるようだし、嫌悪感を抱かれるのはもっと嫌だ。
衝動を抑えるのはつらいが無理強いするものではない。

だが、そうではなかったらしい。
顔を真っ赤にしながら、嫌ではなかったと告げてくれた時には、驚いた。同時に、じわりと身体の奥からあたたかい感情が込み上げてくる。
彼女が要求した内容に、心の底から安堵した。

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