イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
「家でお好み焼きがしたいと言ってただろう。そういえばホットプレートがなかったと思って」
「フライパンじゃだめなの?」
「皿に乗せて食べるより、店みたいに食べた方が美味い」
彼女の目が嬉しそうに輝いて、口元が少し緩んだ。
彼女は、それほど表情が豊かではない。仕事中なんかはそれこそ鉄仮面の呼び名に相応しいくらいだと思う。
が、最近は僅かな表情の変化で、喜んでいるのかどうかくらいはわかるようになった。
それに、近頃ははっきりと笑顔になることも多くなったように思う。
「明日、やってみよう」
「どうしよう、レシピとかわからない……検索してみる」
お好み焼にレシピとかやっぱりあるのか。
それほど複雑でもなさそうだが。
「お好み焼き粉の袋にでも書いてあるんじゃないか? 明日の午前中に買い物に行こう」
「うん」
「一旦、キッチンに置いておく」
そう言って、屈めていた腰を伸ばそうとしたが、蒸気してほんのりと頬を赤く染めた彼女に、引き寄せられた。
キスを察して、彼女が目を閉じる。
重なる唇の甘さに、改めてもう手放せないと思う。
出来る限り憂いなく、ゆっくりと夫婦の関係を深めていきたいと思う。
それにはやはり、今の自分の現状をどうにかしなければならなかった。