イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活

うんざりだったのだ。
感謝はしている。それでも、そこまで人生を縛られる謂れはない。
大学、学部、講義、全て会社のために必要なものを取らされて、就職まで結局は彼らの監視下にある。
せめて結婚相手くらい、自分で選ぶ。押し付けられるくらいなら一生独身でいい。
しかし、叔父夫婦からだけでなく、俺の出自を知る取引先からもそれとなく縁談を持ち掛けられそうになり、辟易していた時だった。事情を知っている上司から見合いを打診されたのは。

「心配しなくても他意はないよ。ただ、君たちふたりは合うような気がするだけ」

穏やかな笑みを浮かべる上司から勧められたのが、園田歩実で。
何の迷いもなく、即座に頷いてしまった自分に驚いた。

< 204 / 269 >

この作品をシェア

pagetop