イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
「……恥ずかしい」
「なんで。お好み焼きの材料を買ってるだけだろ」
「そうなんだけど」

そうなんだけど。
嫌な感じで笑われたわけじゃないからいいんだけど。なんだかとても、生温い目で見守られたような感じだ。
郁人は、他人の目はあまり気にならないみたいで平然と私の手からカートを奪い押して行った。

あれもこれも入れてみたい、ととりあえず思いつくままに買ってみたら、結構な量の食材を買い込んでしまった。
初めてのお好み焼きで、作る前から私はテンションが上がっていた。
いや、お好み焼だからじゃないのかもしれない。郁人も一緒に作ると言ってくれたからだ。

キャベツをみじん切りにするところからふたりがかりだ。キッチンに並んで立っていると、なんだか新婚みたいな気分だった。
いや、新婚なんだけど。今までが今までだから、やっと本当の新婚になった気分。

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