イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
「……それって、私は歓迎されないってことだよね?」
「……そもそも俺が歓迎されてないからな。会社の為にしか」
「でも、叔父さん叔母さんなんだよね?」
「実の息子に継がせたいのが本音だから」

それって、会社だとかそんなものが関係してなかったら、優しい親戚でいてくれた可能性もあるのだろうか。
そんなもしもの話をしたって、仕方がないから口に出しては言わなかった。

私の家は、裕福ではないし両親は常に店で忙しくて、あまり家族らしい思い出はない。
旅行もしたことなかったし、家族みんなで遊びに出かけるということも、私が覚えている限りでごくわずかだ。

それでも、仲が悪かったとは思わない。親戚ともそれなりに付き合いはあり、年末年始の家族の集まりくらいでしか会うことはなかったが、たまにしか会わないとはいえ親戚にすら人見知りを遺憾なく発揮してしまう私にも優しかったように思う。
しかし郁人の叔父夫婦は、実の甥に対してあまりにも情が無い。

そのことを、辛く思う素振りがない郁人のことも不思議だ。

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