イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
近い夫と遠い彼
穏やかな日々の中にも、郁人はやはり忙しい。
いや、更に余裕がなくなったように感じるのは、きっと眞島の後継者問題を早急に解決しようと対応しているからだろうと思う。
私にできることは、出来るだけ家では彼を休ませることだけだった。
「最近、佐々木さんとお昼一緒にしないんですね?」
「うん、ちょっと忙しいみたい」
河内さんは相変わらず、心配性だ。最初はちょっとわがままな扱いづらい人だと思っていたけれど、実はかなりのお人よしのように思う。
常盤さんの存在のことをずっと心配してくれていたので、彼女には詳細は言えないが郁人とちゃんと話をしたことは報告した。
すると、彼女はちょっと私の表情を眺めた後。
「あ、心配なかったんならいいんです。良かったじゃないですか」
と、それ以上聞きたがりもせずあっさりと納得した。
あんなに疑ってかかっていたのに、と訝しく尋ねると彼女はこともなげに言う。
「歩実さんの表情見ればわかります。歩実さん、不安な時ってプルプル震えるハムスターみたいな顔しますから」
「ハム……」
「小動物系、可愛いですよね」
今のは絶対、褒めてない。皮肉だ。