イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
「座ったらどうだ」
「あ、はいっ」
私の分もコーヒーを淹れてもってきてくれた佐々木さんは、ローテーブルにそのカップを置き一番大きなソファに腰かける。
私はちょっと考えて、斜め向かいになる一人掛けのソファを選んだ。すると、すぐに彼に書類を差し出される。
「先に確認を済ませておこう」
書類には、お見合いの日に口約束で確認した事項が箇条書きに並べられていた。それと、婚姻届けだ。受け取って、思わず苦笑いをしてしまった。
「何か不備があるか?」
「あ、いえ。問題ないです」
いや、問題しかないのだけれども。それでも、私はそれ以上何も言わず、一切躊躇わずに婚姻届けに必要事項を書いてぽんっとハンコを押した。この二か月で私は見合いの日よりも迷いなく結婚の意思を固めていた。