イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
目をこすりながら、耳を澄ます。
確かに、玄関の方から音がしたとわかると、私は弾かれたようにベッドから起き上がった。
寝室のドアノブに手をかけようとして、それよりも先に向こうから押し開かれる。
驚いて息が止まり、彼を見上げた。彼の方も、寝室から飛び出すほどの勢いで目の前に現れた私に驚いたようだった。
「……歩実」
掠れた声で名前を呼ばれる。
常夜灯の僅かな灯りでも、彼が少しやつれているのがわかった。
「郁人……」
やっと、帰ってきた。
彼の方も、私の顔を見て実感したのか、表情を崩す。泣いているようにも笑っているようにも見えるその表情を見た途端、私は彼の首筋に縋り付いてしまった。
「良かった……どうしようかと思った」
「心配かけて悪かった」
郁人の両手が、私の体を受け止める。その手にしっかりと抱きしめられた後、私の首筋に摺り寄せるように顔を伏せた。
「歩実……ごめん」
「いいよもう、帰ってくれたんだし」
笑いながら言ったつもりだけれど、涙声になってしまう。郁人は返事をくれなくて、その代わり抱きしめる腕が強くなった。
確かに、玄関の方から音がしたとわかると、私は弾かれたようにベッドから起き上がった。
寝室のドアノブに手をかけようとして、それよりも先に向こうから押し開かれる。
驚いて息が止まり、彼を見上げた。彼の方も、寝室から飛び出すほどの勢いで目の前に現れた私に驚いたようだった。
「……歩実」
掠れた声で名前を呼ばれる。
常夜灯の僅かな灯りでも、彼が少しやつれているのがわかった。
「郁人……」
やっと、帰ってきた。
彼の方も、私の顔を見て実感したのか、表情を崩す。泣いているようにも笑っているようにも見えるその表情を見た途端、私は彼の首筋に縋り付いてしまった。
「良かった……どうしようかと思った」
「心配かけて悪かった」
郁人の両手が、私の体を受け止める。その手にしっかりと抱きしめられた後、私の首筋に摺り寄せるように顔を伏せた。
「歩実……ごめん」
「いいよもう、帰ってくれたんだし」
笑いながら言ったつもりだけれど、涙声になってしまう。郁人は返事をくれなくて、その代わり抱きしめる腕が強くなった。