イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
他の誰かが聞いたら、呆れるだろうか。
こんな状況で初めて、抱かれることを望むなんて。
それでも、私は今、抱いて欲しかった。ちゃんと本物の妻になって、彼を待ちたかったのだ。
肌を辿る熱い手が、私の身体の熱を高めていく。その熱に喉を塞がれ、息苦しいほどの快感を教えられる。
甘さを含んだ自分の声が、耳を塞ぎたくなるほど恥ずかしかった。
欲情を隠さない彼の低い声に呼ばれると、堅苦しくて平凡だと思っていた自分の名前が、とても可愛らしい響きに聞こえた。
過ぎた快感が恐ろしくなって、縋るものを探してシーツを掴む。けれど、その手をすぐに解かれて、彼の首筋に絡ませられた。
私が縋っていいのは彼だけだと、身体に教えこまれる。上手に甘えられると、彼は甘く優しく、私の身体を攻め立てた。
「郁人、郁人……」
「歩実……っ」
うわごとのように繰り返す。
初めての痛みも、切ない程に鳴く身体の熱も昂ぶりも、すべて彼に委ね導かれた。