イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
番号くらい覚えている。
かけようと思えばかけられたのだが、こんな子供染みたバレバレの方法で連絡方法を断たされたことに慎重になる。
これは連絡を取るなという脅しだ。だからバレバレだろうとなんだろうと、叔父には構わないのだ。下手に歩実とコンタクトを取ろうとして、叔父夫婦を怒らせるのは今はまずい。
歩実のことは、何かあれば動木さんが動いてくれるはずだ。頭を下げるのは癪だったが、今回のことで彼ほど全部の事情を知っていてその上でこちらの味方をしてくれている人物はいない。何より、彼には力があった。
今の俺よりも。
それに、祖父の葬儀が終わるまでは、俺も身動きは取りづらい。
不安にさせているだろうことが、気掛かりだった。
申し訳ないと思う。必ず帰ると約束したことを、きっと信じてくれている。
下手なりに、気持ちを伝えてきたつもりだ。始まりはどうあれ、彼女は唯一、俺が自分で選んだ人で、傍にいてほしいと思った人だ。
何があっても離婚はしない。
眞島から自由になるために積み上げてきた実績や人脈を、歩実を守るために使うと決めたのだ。
ようやく一晩だけ彼女の元に帰れたのは、葬儀が終わって数日過ぎてからだった。
何があったか互いに報告しあい、歩実がちゃんと動木さんを頼ったことに安堵して、口惜しさも感じてしまう。
俺ひとりでは守れないことが、不甲斐なかった。
ひとりではまともに守れもしないのに、反対されるとわかっているのに、手を伸ばしてしまった。歩実が欲しい。傍にいて欲しい。
だからどれだけ邪魔が入ろうと、俺は帰る。
必ず帰ると、約束したのだ。
『……愛してる』
抱いた側で伝えた。
その返事を、帰ったら聞くと約束した。