イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
「郁人さん!」
葬儀前からすでに身内の顔で眞島の本宅に出入りしている常盤かすみを、外で会おうと呼び出した。もうじき、祖父の四十九日だ。このまま放っておいては、叔父夫婦が何も言わないのをいいことに増長しそうだった。
彼女は喜んで待ち合わせ場所にやってくる。
「急に呼び出して悪かったな」
「いいのよ、そんな。けどどうしたの? 改まって」
「食事でもどうかと」
そう言うと、彼女は一瞬だけ目を見開き、それから美しく微笑んだ。