イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
エピローグ
***
土曜日、久しぶりに河内さんと会いふたりでランチをした。
相変わらず、彼女の選ぶ店は女子力が高い。しかも、黙って退職した私を怒っているので奢れという。
「あんまりですよ、私にも何も言わずに会社辞めちゃうんですから!」
「ごめんってば。でもすぐに連絡は入れたでしょう?」
「そうですけど。あの後、歩実さんの抜けた穴を埋めれる人材がいなくて本当大変だったんですよ。いえ、今も大変ですよ」
「でも河内さんがいるし……」
「私で歩実さんの代わりが勤まるわけないじゃないですか!」
彼女はぷりぷり怒りながら、このランチブッフェのメインであるローストビーフにフォークを突き刺した。
河内さんには、本当に悪いことをしたと思う。
だけど、郁人が眞島に戻ってから考えたのだ。私があの会社にいると、郁人に迷惑がかかるかもしれない。私が脅されたみたいに、人質みたいなことにされたらと思い、急遽退職届を出した。
上層部としても、親会社に目を付けられている厄介な私を抱えているよりもその方が良かったのだろう。あっさりと、それは受理された。
最後の日、亀爺があまりにも私のことを心配するので、こそっと耳元で亀爺にだけ伝えておいた。
『郁人がちゃんと帰ってくるので、大丈夫です』
にっこり笑ってみせると、亀爺も笑って『そうか』と頷く。
もうじき定年だろう年齢の亀爺に、これ以上心配をかけずに済んで良かったと思う。
土曜日、久しぶりに河内さんと会いふたりでランチをした。
相変わらず、彼女の選ぶ店は女子力が高い。しかも、黙って退職した私を怒っているので奢れという。
「あんまりですよ、私にも何も言わずに会社辞めちゃうんですから!」
「ごめんってば。でもすぐに連絡は入れたでしょう?」
「そうですけど。あの後、歩実さんの抜けた穴を埋めれる人材がいなくて本当大変だったんですよ。いえ、今も大変ですよ」
「でも河内さんがいるし……」
「私で歩実さんの代わりが勤まるわけないじゃないですか!」
彼女はぷりぷり怒りながら、このランチブッフェのメインであるローストビーフにフォークを突き刺した。
河内さんには、本当に悪いことをしたと思う。
だけど、郁人が眞島に戻ってから考えたのだ。私があの会社にいると、郁人に迷惑がかかるかもしれない。私が脅されたみたいに、人質みたいなことにされたらと思い、急遽退職届を出した。
上層部としても、親会社に目を付けられている厄介な私を抱えているよりもその方が良かったのだろう。あっさりと、それは受理された。
最後の日、亀爺があまりにも私のことを心配するので、こそっと耳元で亀爺にだけ伝えておいた。
『郁人がちゃんと帰ってくるので、大丈夫です』
にっこり笑ってみせると、亀爺も笑って『そうか』と頷く。
もうじき定年だろう年齢の亀爺に、これ以上心配をかけずに済んで良かったと思う。