イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活

 何せ、リードは彼の方が取ってくれるだろうと百パー受け身でいたものだから、こっちから連絡するという頭がなかった。まったく来ない連絡に、おかしいかも、と首を傾げたのが二週間たった頃。そのうちイライラしはじめ、無意味にメッセージアプリを開いたり、何か心待ちにしているような変な気持ちにもさせられた。

 それが先週、急にメッセージが入った。ようやく時間が出来そうだから、私の実家に挨拶に伺いたい、と。
 控え目に言って、一分くらいはメッセージを凝視していたと思う。驚きすぎて。もう破談だろうと、残念なようなほっとしたような心地でいた時だったから。


 これほど、他人に精神的に振り回される日常を過ごしたのは初めてだった。

< 26 / 269 >

この作品をシェア

pagetop