イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
どうしても、郁人が申し訳なさそうな顔をするので(眉尻が二ミリくらい下がってる)お願いごとをすることにした。
そんなわけで、ホットプレートの上ではお好み焼が二枚、美味しそうな匂いと音をさせている。

「手伝おうか?」
「いい。座ってろ」

くるん、くるんと大きなへらを使って二枚とも器用にひっくり返した。私は言われた通りに、小皿を前に焼き上がるのをただ待っている。

「こんなのでいいなんて安上がりなやつだな」
「……安上がりというのとは、また違うんだけどね」

外で食べるよりは家がいい。引きこもり根性というやつだろうか、もしもこちらのほうがお金がかかるとしたってその方がいい。
その上、郁人がお好み焼きを焼いてくれるというのは、私にとっては最高のご褒美だ。
以前に家でお好み焼きをしてから、私はすっかり気に入ってしまっていた。
キャベツを細かく刻むのは、結構量も使うし手間がかかるけれど、それも郁人が手伝ってくれるし苦ではない。
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