イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
「もう、あんなことは言わせない」
背中を支えながら優しく押し倒し、私を見おろす彼はひどく神妙な顔だ。私は何のことかわからず、反応に困ってしまった。
「叔父はもうじき一線から身を引く。そうしたら大人しくなるだろうが、まだ時間がかかる」
「え」
「年齢的にはまだ若いが、主昭が後継にならなかったことで社内の力が分散された。そうなると大きな顔も出来なくなる」
そのうち、誰にも文句は言わせないようにする。
そう言いながら、まるで労わるように私の頬や額に口付けた。
「ん……まだ気にしてたの?」
私の方は『叔父』のワードが出るまですっかり忘れていたというのに。
「当たり前だ。煩わしい人間関係が苦手な歩実に、これ以上煩わしいことはないだろう」
「それはそうなんだけど……」