イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活

「図書館とかありますか?」

「ああ。けど、ちょっと距離があるな。バスに乗るか自転車か……バス停はそこだ」

「ありがとうございます」


ちょうどバス停にさしかかったところで、案内表示を一緒に見る。降りるバス停を確認して、また歩く。


「……昔から、本が好きだったとご両親が言ってたな」


 それまで、カーナビのごとく淡々とした道案内と、こちらの質問に答えるぐらいだったのが、ふと思い出したかのように呟かれた。


「はい、本ばかり読んで友達がいなかったので、親は随分気を揉んだみたいで……あ、先日はご挨拶に来てくれたのに、両親がすみませんでした」


 先週の休み、私の実家に行ったときのことだ。

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