イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活

うちは、昔から小さな洋食屋をやっていて、土日はもちろん開店中だ。だけど、上司の紹介で知り合った相手を連れていくからと言うと、日中の数時間だけ店を閉めてくれた。


 店の二階が住居になっているが、両親が私たちを通したのは店内の方だった。挨拶をして小一時間ほど経った時、クローズにしてあるにも関わらずご近所の常連さんが来てしまったのだ。


「すみません、昔っから店のことが第一なので……失礼なことをしてしまって」

「いや、俺の方も突然だった。それに仕事が優先なのは当たり前だ」


 そうか、佐々木さんもありえないくらいの仕事人間だし。もしかしたらうちの両親と気が合うのかもしれない。


「けど、子供の頃からあの調子なので、土日はもちろん夏休みもどこかにでかけた思い出とかないんですよね。あ、私は昔からインドアで本があればそれでよかったんですけど。好きなだけ図書館に居られたし」


 この親にしてこの子あり、というやつか。


「図書館ね……試験の時ぐらいしか使ったことないな」

「学校の図書室の本はあっというまに制覇してしまって。後は図書館に入り浸りです」


 話しながら、あれ、と内心で首を傾げる。普段、それほど自分のことを話さないのに、つらつらと言葉が出てくる。

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