イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
ぶすっ、と彼女はふてくされてパソコンの向こうに顔を引っ込めた。
「相手が園田さんじゃ、他の女性社員が納得しません。気を付けた方がいいですよ」
ワントーン下がった声でそう言われた。そんなことは承知の上だ。だからせめて婚姻届けを出すまでは、秘密にしていたのだ。
しかし、気を付けた方が、というけれどそれはどういう意味だろう。『私の方が佐々木さんに相応しい』とか、愛人志願者が増えるということだろうか。
それこそ、無意味なことだと思うけど。
元々、佐々木さんは女性社員の注目の的だったにもかかわらず、浮いた話の聞かない人だった。もしかして誰にもバレないように誰かと付き合ったりしていたのかなと思ったけれど、そんな器用な人でもない気がする、というのが、一緒に住んでみて私が思ったことだ。
たとえ書類上のみだろうと結婚した以上は、社会的地位を失墜させるようなことをするとも思えない。つまり、今更、外でいい加減な関係を結ぶわけがない。
だって重症のワーカホリックだもの。