イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
「歩実、聞いてるか」
「はいっ、聞いてます!」
「明日は、昼は会社でゆっくりとれそうだ」
「そうなんですかぁ」
どうして昼の予定のことを言われているのだろう、と不思議に思いながら相槌で返すと、そこで会話が途切れた。
私たちの間で会話が続かないのも沈黙も少しも珍しいことではないが、なんとなく引っかかって首を傾げる。
お昼は、会社で、ゆっくり食べる?
お酒のせいで頭の回転が鈍いながらに、やっとそこで思い出した。
「あ、お弁当! じゃあ明日、作る」
「頼む」
あぶないあぶない。その話を今日の昼にしていたことを、かろうじて思い出せて良かった。明日はお弁当初日だし、私のだけなら適当でいいかなー、と思っていたけれど郁人のも一緒に作るとなるとそうもいくまい。
「何かリクエストは、」
ある? と、隣を歩く郁人に聞こうとした時だ。
足がくにゃりとなってふらついた。