恋愛下手な年下研究者の実験体になりました。




 しばらくすると、律紀の乗るバスが来た。
 バスに乗った瞬間、遠くでドォォォン!!と、何かがぶつかるような音が聞こえた。
 バスに乗っている人はまばらだったけれど、それでもその大きな衝撃音は聞こえたようで、皆、周りを見ている。けれど、この場所からは何も見えなかった。


 運転手もそれを確認したのか、律紀を乗せたバスはゆっくりと走り始めた。


 しばらくバスが移動した時だった。
 そして、バスに乗っている皆がすぐに異変に気づいた。
 律紀が乗っているバスは田舎特有の小さなバスだった。そのため、進行方向はよく見える。

 2台の車が、ぶつかっているのがわかると、バスの乗客からは悲鳴が聞こえた。律紀をそれを見て顔を歪めながら唖然としてしまう。

 黒の乗用車が何故か歩道に突っ込んでおり、突然止まった黒の車を避けられなかったのか、白の小型トラックが黒色の乗用車の後ろ部分に突っ込んでいる。
 白いトラックから出てきた2人は、手や顔から血を出しながらも、必死に何かを叫んで歩道へと掛け出した。

 律紀は歩道へ目を向けると、そこに何かがあるのに気づいた。
 スーツの男が呆然と立っているところに、誰かが倒れているのだ。 
 白い小型トラックから出てきた男女が救護しているのか顔は見えなかった。
 けれど、少し離れた場所に真っ赤なランドセルが落ちていた。そして、そこには見覚えがあるうさぎのマスコット。

 それを見た瞬間、律紀は息がヒュッと鳴った。


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